研究概要 |
昨年度までの研究では,仮説発見を論理的な行為として定式化し,これまで機械学習やアブダクションなどの分野でばらばらであった仮説発見の世界に統一的な視点を与えることに成功した.また,古典論理における仮説発見手法として,連結証明法とHerbrandの定理を用いた残余仮説の構成を考案した.さらに,事実と背景知識と残余仮説との関係は,適切さの論理(relevant logic)の証明によって特徴付けられることを明らかにした. 本年度は,この研究成果の展開と公表を行った.適切さの論理では,前提となる論理式を全て利用することで帰結が証明される.上述の成果は,事実と背景知識を総動員してはじめて証明が完成していることを示している.仮説を生成する根拠はデータと背景知識しかないのであるから,仮説が事実の説明以上の能力を有しないという性質が,適切さの論理と結びつくのは自然な結果である.さらに,仮説発見には,複数個生成される仮説の中から適切な仮説を選択するという問題が常に付随するが,その基準として証明補完に証明の性質を用いた仮説の選択基準があることを示していることが明らかになった.また,連結証明法が命題変数(の列)に関する方程式の求解であることに着目し,残余仮説の方程式の解としての性質を与えた. 本研究成果は国際会議で発表するとともに,国際雑誌に投稿し,受理された.また,関連研究者との交流と情報交換を活発化するためワークショップを九州大学で開催した.さらにそのワークショップに関するホームページを開設した所,早速海外から問い合わせがあり,本研究とその関連研究が海外においても注目されていることを示すことができた.
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