研究概要 |
状況判断や意思決定が必要とされるとき,必ずしも手許に十分かつ正確な情報があるとは限らない.特に,時間や資源の制約がある場合には,認知・判断・行為に関する人間と機械の適切な協調形態が望まれる.本研究の第1の目的は,アダプティブ・オートメーション(適応的機能配分)の理論的・実験的研究を深めることである.すなわち,(1)情報獲得,(2)情報解析,(3)意思決定,(4)行為実行の各フェーズでの自動化レベル(人間と機械の役割分担)の設定を議論することの重要性を示すとともに、適応的機能配分の実現に本質的役割を演じる概念が「権限共有」と「権限委譲」であることを明らかにした. 本研究の第2の目的は,認知に誘導される心的決定過程の性質を明らかにすることである.情報や時間資源に強い制約があるときは,状況認知が意思決定において主導的役割を果たすことが明らかになっているが,従来の規範的決定論では,この現象を矛盾なく表現することはできない.本研究では,航空機の離陸中断・継続決定問題,巡航中の異常発生による緊急着陸空港選定問題を例にとって,認知に誘導される心的決定過程を明らかにした.さらに,決定問題に規範性と認知主導性が共存しうることを示した. 本研究の第3の目的は,動的に入手される不完全情報に基づく信念更新過程の解析である.被験者を用いた証拠理論的実験を行って信念更新過程を抽出し,被験者の心的情報更新規則には,すでに構築した信念構造への「慣性」が見られることを明らかにした.
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