研究概要 |
医療情報の中央集積化が進展し,実用的な方面から電子カルテ・患者データの電子化が急速に進められており,癌プロトコルデータベースをはじめ,膨大なデータが集積が可能となっている.しかしながら,データベースから抽出された知識および実際に蓄えられたデータを再利用する立場からの研究はほとんどない.本研究では,知識工学的手法を用いて,蓄積された診療データベースからの再利用を試みようとするものである:(1)診療支援では,診断のみならず治療内容が重要な情報であることも多い.したがって,検索したい類似の症例から,参考になる治療内容・治療経過等の情報を抽出できることが望ましい.(2)各症例が診断困難・治療困難であればあるほど,それに類似した症例のきわめて詳細な記述が必要である.この場合,ユーザーの必要かつ十分な情報が抽出できることが望ましい.(3)専門家は,典型的な症例に関してはルールベース推論を,診療困難な症例に関しては,症例準拠型推論に近い推論をすることが,機械学習の研究によって明らかになってきている.以上のように,本研究によって,研究段階とはいえ,以下の結果が得られてきている:(1)専門家により近い推論機構を実装することで,知能情報学的な立場からより高度な診療支援システムを開発,その性能を医療現場において評価,より専門家の推論機構についての深い考察を行える.(2)システムを単一施設のみで稼動させるのではなく,インターネット上で公開することも考慮することで,地域医療支援システムの構築に貢献できる.本研究では,平成14年1月の時点で,問題領域を頭痛の鑑別診断に絞り,システムの構築を完成,平成14年2月より,インターネット上でのテストを行っている.今後,知識ベースの充実を図り,システムを公開していく予定である.
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