研究概要 |
本研究は競合連想ニューラルネットを次の2つの側面から研究し,それぞれ以下の成果を得ることができた. 1.効率的な逐次的学習方法の構成と解析: 競合連想ネットワークを構成するユニット数が非常に多いときの最適性の条件として,漸近最適条件を導出すことに成功し,逐次的学習方法の構築とその性能評価を行った.従来のBPN(Back-Propagation net),RBFN(Radial Basis Function Net),SVR(Support Vector Regression)と比較し,この学習法の関数近似性能の高さを示すことができた.さらに構成した逐次的学習方法の有用性は,下述の制御への応用の他,降水量推定,音声認識,非線形カオス予測などへ応用し,良好な結果を得た.特に,2001年に電子情報通信学会が主催した降水量推定コンテストでは全国第2位の成績を得ることができた.これらの結果は別紙資料の8編の研究発表論文として投稿し掲載された. 2.モデル切り替え型適応制御への応用: 上記1.の成果をシリコンウエハの洗浄液(RCA洗浄液)の温度制御に応用した.実際のRCA洗浄システムでの実験は高濃度の硫酸や過酸化水素水を使用するため危険が伴うと同時に,環境温度や動作条件を同一にすることが難しく,再現性のある制御検証実験を行うことが非常に難しい.さらに本研究の当初はこの洗浄システムの反応様式の解明はほとんど行われておらず,特に時変で非線形の発熱反応を示す洗浄液の熱モデル化は非常に困難であった.本研究ではこの難問を解決し,RCA洗浄システムの加熱と応答を忠実に再現する熱モデルの構築に成功した.この成果を用いて競合連想ネットを用いた制御法を構築し実際に応用することができた.また洗浄システムを計算機で模擬するプラントシミュレータを開発し,それを用いて内部アルゴリズムが公表されていない市販の制御装置との制御性能比較実験も行い,提案手法の有効性も示した.以上の制御に関する結果は4編の研究発表論文として投稿し掲載された. なお,本研究の課題2.のRCA洗浄システムのモデル構築,実際の実験,プラントシミュレータの開発においては,小松エレクトロニクス(株)の多大な援助を受けました.ここに感謝いたします.
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