平成12年度の研究の焦点は、関連性理論(スパーバー、ウイルソン共著、1995年)の枠組みを用いて、日本語のゼロ代名詞、および名詞句指示表現の理論的研究をすすめることであった。年度始めより研究代表者がすすめてきたゼロ代名詞の研究は9月にケンブリッジで行われたThe 2^<nd> International Conference in Contrastive Semantics and Pragmaticsにて発表を行い、貴重なフィードバックを得るに至った。この研究は最終的に学習院大学言語共同研究所紀要に"Japanese zero-pronouns as null arguments:Their linguistic underspecification and pragmatic saturation/enrichment"という論文にまとめられた。名詞句指示表現の研究は8月に行われた学習院大学言語共同研究所主催関連性理論研究会(200人に及ぶオーディエンスの参加があった)において「指示表現の解釈と関連性」と題した講演にまとめられ、こちらも他の講演者とのディスカッションなどを通じて今後の研究に非常に参考になる意見を聞くことができた。この講演をまとめたものが研究社の『英語青年』10月号に掲載された。さらに研究代表者の博士論文をもとにした英語名詞句指示表現の研究が10月にオランダのJohn Benjamins社から出版されるに至った。 研究代表者は8月には関連性理論の創始者であるDeirdre Wilsonと有意義な話し合いをすることができ、さらには彼女が2002年3月に来日し、本研究に関連したワークショップなどを行うことが決まった。12月には研究分担者の松本裕治氏の所属する奈良先端科学技術大学院大学情報研究科において講義を行い、実装の可能性について討議を行った。
|