日本語指示表現の解釈過程-理論から実証へ

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12680396
• 研究機関: 国際基督教大学
• 研究代表者: 松井 智子 国際基督教大学, 教養学部, 助教授 (20296792)
• 研究分担者: 松本 裕治 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (10211575)
• キーワード: 関連性理論 / ゼロ代名詞 / 名詞句指示表現 / 語用論

研究概要

平成13年度の研究の焦点は、12年度になされた関連性理論(スパーバー、ウイルソン共著、1995年)を用いた日本語のゼロ代名詞、および名詞句指示表現の理論的研究に基づき、実証研究を行うことであった。当初はコンピューターによる英語代名詞の解釈に応用され、高い成功率をおさめていることで知られているセンタリング理論を利用して日本語のゼロ代名詞の解釈を試みることを予定していたが、単純に日本語に英語のシステムを当てはめることは難しいということがわかった。そこで研究分担者が既に進めてきていた日本語のテキスト要約のシステムにおいてゼロ代名詞の解釈がどのように効率よく行われるかを実証する方向で研究を進めることとなった。その結果は研究分担者の論文「新聞報道記事に対するテキスト構造解析の傾向とその手がかり情報の検討」(「軽量国語学」第22巻8号)などに報告されている。
研究代表者は関連性理論の「文脈効果」「処理負担」という2概念が指示表現解釈の鍵を握ると考え、これらの概念の相互作用を実証するために、カリフォルニア大学サンタクルズ校のRaymond Gibbsとともに実験を行った。その結果はExperimental pragmatics : Towards testing relevance-based predictions about anaphoric bridging inferences (Modeling and Using Context, Lecture Notes in Artificial Intelligence 2001)に報告されている。さらに3月には研究協力者のDeirdre Wilson, Jerry Hobbs, Raymond Gibbsらとともにワークショップを企画しており、それを通してこれらの概念の形式化に向けて検討を始めることになっている。

研究成果

• [文献書誌] MATSUI, Tomoko: "Experimental pragmatics : Towards testing Relevance-based predictions about anaphoric bridging inferences"In V. Akman, P. Bouquet, R. Thomason and R. A. Young (eds.) Modeling and Using Context, Lecture notes in Artificial Intelligence. 248-260 (2001)
• [文献書誌] 松井 智子: "関連性理論から見たポライトネス-意図伝達の問題について"月刊 言語. 11. 52-59 (2001)
• [文献書誌] MATSUI, Tomoko, P. McCagg, T. Yamamoto: "Young children's uses of dakara : Casting doubt on the primary-to-extended sense view of category development"ICU Language Research Bulletin. 16. 69-83 (2002)
• [文献書誌] 竹内和広, 松本裕治: "新聞報道記事に対するテキスト構造解析の傾向とその手がかり情報の検討"計量国語学. 22・8. 319-334 (2001)
• [文献書誌] Tadashi Nomoto, Yuji Matsumoto: "A new approach to unspervised text Summarization"Proceedings of 24th annual international ALM SIGIR conference on research and development in information retrieval. 26-34 (2001)
• [文献書誌] 松本 裕治: "HPSGの実装と拡張について"日本英語学会第19回大会シンポジウム"Constraint-based lexicalism" conference handbook. 198-203 (2001)