研究課題/領域番号 |
12680397
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
樋田 栄揮 玉川大学, 工学部, 助教授 (60142006)
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研究分担者 |
斎藤 秀昭 玉川大学, 工学部, 教授 (30215553)
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キーワード | 広視野運動 / 二方向重畳運動刺激 / 運動方向認知 / 運動残効 / 方向選択性細胞 / 自発放電 / サル / MST野 |
研究概要 |
今年度は、以下の3つの問題について研究を行った。 (1)二方向重畳広視野運動刺激に対する運動残効知覚の神経機構に関する研究 運動残効の方向認知特性がMST野に存在する方向選択性細胞群の自発放電頻度分布によって説明できるかどうかを調べるため、30秒間の順応刺激呈示後の自発放電頻度を解析した。順応刺激前と比べ順応刺激後の自発放電レベルは約25%程減少した。この結果は運動残効知覚が方向選択性細胞の自発発火活動によりもたらされている可能性を示している。 (2)二方向重畳広視野運動刺激に対するニホンザル視覚連合野(MST野)における方向選択性細胞のチューニング特性の解析 二方向重畳広視野運動刺激に対する運動知覚が二方向であるのに対し、運動残効は一方向に現われる。一見矛盾する二つの現象を統一的に説明するため、MST野の方向選択性細胞には重畳刺激を構成する一方の運動成分のみを検出するコンポーネント細胞と二つの運動の統合運動方向を検出する統合細胞とが存在するかどうかを調べた。運動方向が120°異なる二つの運動成分からなる重畳刺激を用いた反応結果からコンポーネント細胞と統合細胞の存在を確認することが出来た。重畳運動に対する知覚特性はコンポーネント細胞が関与し、重畳刺激によって生ずる運動残効の知覚は統合細胞によって得られるのではないかと考えられる。 (3)二方向重畳広視野刺激に対する方向認知特性の解析 被験者に短時間(30〜100ミリ秒)重畳刺激を呈示すると、全試行の内約60%では二方向の運動知覚が報告されたが約10%で一方向すなわち重畳刺激の統合方向の運動が知覚された。脳内では上記(2)で述べたコンポーネント細胞と統合細胞による運動情報表現が得られており、短時間パターン呈示ではそのうちの一方のみを選択するための処理に要する時間が十分ではないため、一方向すなわち統合方向への知覚が得られる場合があるのではないかと考えられる。
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