本研究の一環として、申請者らは今年度、 1.視覚情報と触覚情報の提示順序ならびにその時間的ずれとマンマシンインタフェース効率の関係 2.情報提示に遅延を内在する場合のネットワーク対話性への影響 3.立体視覚における輻輳と調節の不一致がマンマシンインタフェース効率に与える影響の3点を調査した。 すなわち1.では視覚提示と力覚提示の順序と時間差に着目し、いわゆるプレゼンスとインタラクションのリアリティを損なわないための条件を調査した。具体的には、ユーザーがその仮身(アバター)を自由に操ることができるように設定し、アバターの位置と動き(および他のオブジェクトとの衝突や接触)をグラフィックスによる視覚提示とフォースフィードバック型ジョイスティックによる力覚提示によりユーザーに伝える。そこでその視覚提示と力覚提示の時間を調整し、(1)前者を後者より早く提示する(2)前者と後者を同時刻に提示する(3)後者を前者より早く提示する、などの実験を行い、ユーザーの作業効率と(作業を遂行するうえでの)操作感・現実感がどのように変化するか、また許容範囲などについて調査した^<(1)>。 次に2.では昨年度申請者らが提案した予測を用いた対戦相手との実時間インタラクション手法:PFL(Predictive Feedback Loop)を実装し^<(2)>模擬遅延のあるネットワーク環境でのタスクパフォーマンス評価実験を行った。実験で採用した協調作業においてはユーザーどうしが互いに協力的に作業を遂行することから、位置、速度ならびに加速度のみをパラメータとする上記の力学モデルなどの単純な予測手法でもパフォーマンス向上が見込める(実験の結果では有意な差が認められ、約20%程度のパフォーマンス向上が示された)ことを確認した^<(3)(4)>。 最後に3.ではよりリアルな仮想環境を構築するための3次元視覚表示手法を検討した。すなわち、輻輳と調節を独立に制御できるHMD(Head Mounted Display)を用いて仮想スポーツ環境を構築し、そこで輻輳と調節の一致/不一致とスポーツ環境のリアリティ(具体的には捕球タスク)との関係を調査した^<(5)(6)>。その結果輻輳と調節の一致が動的対象の視覚提示に重要であることが示された。
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