本研究で明らかにしたことは、以下の機能の実現である。これらの機能を申請者がこれまで開発してきた独居老人介護システムに追加した。 (1)センサエージェントによる空気汚染方向の推定を可能にした。ガスセンサをエージェントとし、マルチエージェントを用いて空気汚染の方向を推定するものである。 (2)複数のガスセンサを用いたガス発生源の逆探知を行う方法を開発した。対象空間のガス伝搬関数f(x)を求め、f(x)の逆関数を用いてセンサ位置から発生源を求めたものである。 (3)遺伝的アルゴリズムを用いて、室内に設置した可燃性ガスセンサの出力信号から、室内における各ガス発生源ごとのガス濃度変化信号の推定と、それらの合成信号である事象信号の推定を行う手法を提案した。また、実際に人間が生活する室内空間にガスセンサを配置し、そのセンサ出力信号から、提案手法を適用して得られた推定濃度変化信号と推定事象信号が、人の行動に概ね対応していることを示した。 (4)推論による平常時と異なるふるまいの認知を可能にした。ガスセンサから得られる情報を元に、平常時と異なるふるまいを推論により認知するものである。ふるまいの異常認知.危険なふるまいの判定、老人性痴呆の早期発見、外部からの人の侵入検知に効果的である。 (5)個人のニオイの嗜好と慣れを考慮した脱臭システムの制御を可能にした。無害な嫌いなニオイに対して、ニオイの元が完全になくなるまで脱臭システムを働かせるのではなく、ニオイが気にならなくなった段階で切れるように制御するものである。 (6)室内観葉植物の汚染空気浄化過程を明らかにした。これにより、植物による室内空気浄化の実用化が期待できるようになった。対象とした有機ガスは.ホルムアルデヒドであり、室内で発生する有毒ガスである。
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