研究概要 |
尺八譜情報の処理システムを構築には,まず尺八譜の表記に用いる「譜字」を計算機可読な形で表現することが必要である.譜字は流派により異なるが,同じ演奏を行う(音を出す)ためには同じ奏法が用られると仮定し,音高・指遣い等から機械的に決定可能な流派に依存しない統一コードとしてCOMSO譜字コードを提案,これに基づいてシステムの開発を進めて来た.しかし,研究が進むにつれ,指遣いも含めた演奏方法は流派・伝承系譜等により異なる場合があり,同一と見なすべき譜字に異なる譜字コードが,あるいは流派間で対応する譜字が存在しない場合があること,同一の指遣いにもかかわらず,乙音と甲音とで異なる譜字を用いる場合があること,一つの流派で使用される譜字の個数は高々100程度だがその何十倍もの領域の確保が必要,等の問題点が明らかになってきた. そこで,今年度は,まず各流派・伝承系譜で用いられている譜字および指遣いに関する幾つかの資料を参照し,譜字とその指遣いの関係を調査した.その結果,予想以上に流派および伝承系譜による指遣いのバリエーションが多いことが判明したため,COMSO譜字コードを全面的に見直すこととした.すなわち,尺八譜の譜字を最低音から最高音まで半音毎33音高に分類し,各音高内における「異指法同音高」のうち最も基本的なものを「標準譜字」と定義,その他の譜字は使用頻度の高いものから順序付けを行い,これらの組み合わせにより算出できる値を新しいCOMSO譜字コードとし,上記の問題点を解決した. また並行して,開発中の尺八譜情報処理システムの改良を行った.まず,都山流,竹保流に加えて琴古流尺八譜も処理可能な尺八譜として追加した.また,従来譜字の入力方法は電子ペンによる手書き入力のみであったが,メニュー欄にスピードボタンを配置し,これにより入力可能なように改良を行った結果,入力効率が大幅に改善された.
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