研究概要 |
平成12年度は,以下の研究成果を得た. 1.空間複合の意味での複合施設を取り上げ,複数のサービスを提供する施設がサービスを選択的に提供する場合に,総体としてどのようにサービスを施設に配分するかという最適化問題を連続立地モデルとして定式化し,サービスの最適混合と最適配置パターンを求めた.その結果,一様需要のもとで互いに対等なサービスを前提とした場合でも,一般に中心集中立地と均等分散立地の中間的な配置が得られ,最適配置パターンは正確にシステマティックな均等配置にはならないことが明らかとなった.これは,公園施設と幼稚園・保育所・高齢者福祉施設との複合のように施設を複合化させる場合,利用者の平均距離最小化を目的とするならば,従来の近隣住区論に基づいた施設配置パターンに代わる一様でない配置を検討する必要があることを示唆するものである. 2.空間複合型施設の配置決定を離散立地モデルとしても定式化し,土地代の上昇に伴って空間複合型施設が出現する仕組みを最適配置モデルに基づき導出し,その解の性質を明らかにした.施設数所与の場合および施設数内生の場合の空間複合型施設配置問題を線形0-1計画問題として定式化し,東京都心区から抽出したネットワークを対象に幼稚園・小学校・児童館・図書館の4種の施設を設置する問題の解を求めた結果,施設数所与のモデルでは,土地代が上昇するのに伴って,移動費用よりも複合化による土地費用の節約が優先され,施設同士が空間的に複合化していく過程が再現された.一方,施設数内生のモデルでは,土地代の上昇に伴って,施設数はあまり減少させずに複合化を進行させ,施設設置場所数を減らしていくことが明らかとなった. 3.利用複合の意味での複合施設の最適配置や競争立地を考える準備として,2次元平面において,利用者がいくつかの施設を総移動距離が最小になるように周遊するという前提の下で,利用する施設の組を明らかにする周遊距離Voronoi図の概念を提示し,高次Voronoi図や重ね合わせVoronoi図との比較を行った.これを用いて,今後,競争立地モデルへの展開,公共施設を想定した社会的最適配置モデルへの応用,個人属性により異なるであろう現実の周遊行動を取り入れた施設配置の評価への応用を考えていく.
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