研究概要 |
本年度の研究においては,先見性を考慮した安定性に基づく2つの解,安定集合と調和集合について,その理論的性質を明らかにするとともに,これらの解を用いて,寡占状態にある企業間競争,社会的ジレンマにおける主体の行動を分析し,以下の成果を得た. 1 安定集合と調和集合それぞれの性質およびその関連を理論的に詳しく調べるとともに,その背後にある動的なメカニズムを明らかにするために,ある交渉ゲームを考え,その定常的な均衡点の集合とこれら2つの集合との関連を詳しく考察した.その結果,定常的な均衡点と密接に関連するのは,安定集合と調和集合の安定性を混合させて得られる新たな集合であることが明らかになり,この発見についての詳しい考察は,来年度の新たな研究課題とすることとした. 2 安定集合と調和集合を用いて,寡占状態にある企業および社会的ジレンマの状況にある主体の行動を分析し,そのいずれにおいても,安定集合はパレート最適で個人合理的な結果を導くこと,また最大の調和集合においては個人合理的な結果すべてが起こりうることを明らかにした.この結果,たとえ企業ないしは主体が拘束力のある合意を結ぶことが出来なくとも,それぞれが先見性を持って行動すれば,安定集合による安定性のもとでは,パレート最適な状態が導かれることが明らかになった. 昨年12月18日〜21日にオーストラリアのアデレードで開催された「動的ゲームとその応用に関する第9回国際会議」において,"Farsighted Stability in n-Person Prisoner's Dilemma"というタイトルで,特に上記の2の結果について報告し,この研究の意味,今後の発展の方向などについて,参加者と有益な議論を行った.
|