研究概要 |
デジタル社会におけるサイバー・コモンズの生成・発展に関して,社会情報システム学の観点から展開を図った.サイバー・コモンズは,電子的なネットワーク上に成立する情報や知識の集積的空間である.この空間は,自然に成立している牧草地や森林などのコモンズとは異なる.従来から論じられているコモンズでは,利用形態が,その議論の中心であるが,サイバー・コモンズは,生成と利用の両面について論ずる必要性がある点で異なっている.さらに,サイバー・コモンズでは,情報財のもつ特性についての議論も必要とされている. 本年度は,スタートの年度であり,特に,海外での研究の動向の調査や文献の探索・レビューに注力した.海外での研究動向に関しては,e-Marketplaceなど,電子商取引で先駆的な実践の報告や研究発表がなされているCLM(Council for Logistics Management)の大会に参加し,調査を行った.また,文献的研究では,組織論研究と関連の深いエージェント技術に関する論文を中心に探索・レビューを行った. 具体的な研究課題としては,生活医療情報との関連では,その共有化や,それらの情報や知識の収集や取得における協調について検討し,また,電子的な討議との関連では,自治体における電子的な討議の事例について調査し,情報公開との関連などを検討した.方法論に関し,マルチエージェント・シミュレータとの関連では,操作的オーガニゼーション・モデルの実現を図るための基礎的な事項を検討し,学際的な領域との関連づけについては,用語間関係に着目し,社会情報学,調整科学,複雑系科学の解明などを図った. 次年度は,これらの研究成果を国際研究発表大会で報告し,さらに本課題を推進するための知見を深める予定である.
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