公共部門における政策を決定するに際しては、合理的かつ最適な意思決定を行うことは必須かつ重要である。本研究では、交通・輸送、情報・通信、公共施設配置、環境・エネルギー、医療など多くネットワーク構造を有する公共システムにおける問題解決に定量的数理モデル分析の理論と手法を応用することに関して理論的実証的分析を行い、多くの客観的データに基づく統計処理あるいは数理モデルを用いた分析等を行うことによって得られる客観的、合理的かつ最適な意思決定の理論と手法を公共政策の決定に役立てることを試みた。交通・輸送関連分野の研究として、交通事故データの事故死者数の推計のための統計分析、PSA手法を用いた事故対策評価手法の開発を行った。さらに鉄道事業における軌道保守計画作成のための実用的数理モデルの構築と実証分析を行い、われわれのモデルが十分に現実的問題解決に有用であることを確認した。公共施設配置問題として、高齢者保健福祉サービス施設の最適施設配置問題を取り上げ、数理計画モデル分析によって地域間格差縮小化を目的とする最適配置解を得た。また公益事業としての電気事業を対象として、電力自由化後の最適電力供給体制に関する混合型整数計画モデルを用いて、実際のわが国の電力会社を対象とする電力自由化対策としての新規電気事業者入札制度に関する分析を行った。数理モデルに基づく基礎的理論と手法の適用に関して、最短経路法の最適施設配置問題への応用を試み、理論的研究成果を得た。また、議員定数配分問題に対する除数法の一般化を試み、理論的展開と数値実験の研究を行い、これまで非常に難しい問題とされている未解決の議員定数配分問題に対する貴重な研究成果を得た。
|