研究概要 |
本研究は,1999年に大鋳が時系列データのカオス的解析法として提案したcos解析法の有効性を実際的な観点と理論的な観点から解明するとともに,これによるパケット流のデータ解析を基にしたネットワークシステムの理論モデルの構築と解析を目的にしたものであり,成果として次のことがあげられる. 樹脂押し出し機の圧力データに対してcos解析を用いてWindow法および分割法等により適応した結果cos解析法が,樹脂押し出し機の異常を予知し得ることが分かった.また,cos解析法の理論的解析を行い,ランダムなデータに対してcos解析法を適応すると-1/2の値が得られることを理論的に証明した.このことにより,cos解析法を時系列データがランダムであるかどうかの判定に用い得ることを示した.これらの成果は,日本応用数理学会論文誌(Transactions of the Japan Society for Industrial and Applied Mathematics)に採択され,公表予定である. さらに,上記の理論的解析の条件を大幅に拡張すると同時に,様々なタイプの時系列データに対してcos解析法がいかなる値を与えるかの理論的解明を行なった.これらの成果については,論文としてまとめ投稿する予定である. 使いやすいcos解析法の総合的なソフトウェアを構築した.また,時系列データのカオス的解析法の代表的なものとして樋口の方法があるが,これについてもソフトウェアを構築した. 待ち行列については,モデル構築とその解析を行い,大偏差原理を用いた裾の分布の評価を行い,国際会議で発表した. 我々の研究は複雑系の範疇に入るものであるが,社会現象,物理現象,経済現象等の複雑系のモデル構築に用いられるセルオートマトンについて理論的解析を行い,ルール180の周期性と時間空間パターンを解明し,また情報理論における通信路容量,曖昧度とハウスドルフ次元との関係についても解明した.
|