研究概要 |
本研究は,時系列データのカオス的解析手法に関する研究を主軸としたシステムのカオス・フラクタル的特徴付けと解析に関するものである. まず,時系列データのカオス的解析手法に関する研究としては,1999年に大鋳が時系列データのカオス的解析法として提案したCOS解析法の有効性を実際的な観点と理論的な観点から解明した.樹脂押し出し機の圧力データに対してcos解析をWindow法および分割法等により適応した結果,cos解析法が,樹脂押し出し機の異常を予知し得ることが分かった.また,cos解析法の理論的解析を行い,ランダムなデータに対してcos解析法を適応すると-1/2の値が得られることを理論的に証明した.このことにより,cos解析法を時系列データがランダムであるかどうかの判定に用い得ることを示した.これらの成果は,大鋳史男,鈴木達也,杉本一臣,時系列データを判別するカオス的手法について,日本応用数理学会論文誌,Vol.12(2002),No.1,pp-67-78,として公表されている. 又,複雑システムのモデルとしてよく用いられるセルオートマトンについて,特にルール番号180のものについて,その周期的な性質をルール番号90のセルオートマトンとの関係において解明し,これらの成果は,Fumio Ohi and Yoshikazu Takamatsu(2001), Time-Space Pattern and Periodic Property of Elementary Cellular Automata-Sierpinski Gasket and Partially Sierpinski Gasket, Japan, Journal of Industrial and Applied Mathematics, Vol.18,No.1,pp.59-73,として公表されている. システムのフラクタル的特徴付けとしては,情報理論における通信路容量と曖昧集合の曖昧度をフラクタル次元を用いて特徴づけることを試みた.これらの成果は,応用数理学会の年会において口頭発表を行なうと共にJapan Journal of Industrial and Applied Mathematicsに投稿中である.さらに複雑システムの代表的なものの一つである待ち行列システムについては,モデル構築とその解析を行い,大偏差原理を用いた裾の分布の評価を行い,その成果は国際会議等で発表されている.
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