研究課題/領域番号 |
12680441
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 紘一 京都大学, 工学研究科, 教授 (70026079)
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研究分担者 |
幸田 武久 京都大学, 工学研究科, 助教授 (60205333)
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キーワード | 複雑系事故 / ヒューマンエラー / 背景要因 / メンタルイメージ / エラー分類規則 / 要素故障 / 状況認識 / 行為生成 |
研究概要 |
研究計画の初年度である今年度は、ヒューマンエラー(HE)発生や要素故障の背景要因を要因の因果関係規則を用いて導出する枠組みについて検討した。 まず、HEの原因を考える際に、事故調査等で得られた客観的な観測された事実から人間の認知過程を推定するために、人間の外部感覚から得られた情報に基づいて外部世界の認識を表現するメンタルイメージの概念を用いた。どのように状況判断して(メンタルイメージの生成)、行動の意思決定を行って(メンタルイメージに基づく結果予測)、行動を実行したかを解析することにより、人間の認知過程のどこに問題点(正しいと考えられる行動規準からのずれ)があったかを明らかにしてエラーの発生箇所を同定する。同定されたエラー箇所に関連する背景要因の同定に関しては、心理学や認知工学で得られているHEに関する知見を整理した、因子型と表現型に代表されるエラー分類規則を用いることにより背景要因を導出することが可能であると考えられる。船舶事故や原子力発電に関する事故に提案する方法を適用してHEの背景要因の抽出に関する検討を行い、その有効性を検証した。今後、さらにエラー分類規則を充実させていくことが必要である。 ところで、複雑系においては、その状況判断が正しく行われないと適切な対応ができないことはいうまでもない。そこで複雑系の状況(異常が発生しているかどうかを)を正しく判断できるための観測項目の設定について検討した。従来における観測点の設定は、想定されるシステム異常を検出することに重点が置かれ、システム異常発生に関与しない個々の異常事象は無視される傾向にあった。しかし、異常発生状態を考えると関与しない、重要でないと思われる事象が複雑に絡んで、重要な事象の発見を妨げる傾向にあると考えられる。このような混乱を避けるためには、システム状態を正しく把握できるためにシステムを構成する重要な要素の状態を同定できる観測点の配置法を検討した。すなわち、システムにおいて想定された要素故障を同定できるために必要かつ最小限の観測点を求める問題である。一般的に要素挙動は入出力関係で表現でき、システム挙動はこれらの組み合わせで表現できるが、システムは流体系や機械系など種々の異なる系からなるので一般的な統一的なモデル表現を行うことは困難である。そこで、エネルギー流の観点からシステムを統一的にモデル表現するボンドグラフを用いて、システム全体の挙動を表すシステム状態方程式を導出して、要素異常をできる必要最小限の観測点の配置を決定する方法を開発した。複数個の観測点の組み合わせが選択候補として得られるので、人間の認知特性の観点から最適な観測点の配置方法を今後さらに検討する必要がある。また、システム状態の検出と関連して、潜在的な故障の影響がシステム機能に与える影響を評価することについて検討した。
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