1990年代以降、交通流現象のモデル化とシミュレーションが動的相転移やパターン形成などの観点から活発に行われている。近年、現実の二車線以上の高速道路に対応し、車線変更などの挙動を記述できるモデルの構築進められ、本研究の課題の他、セルオートマトンモデルに基づくいくつかのモデルが提案されている。一方、実測データとの比較検討を通じた現象の理解が進められている. 本研究では、これまで研究代表者(只木)らが中心となって開発してきた、最適速度モデルを離散化した結合写像モデルを改良し、二車線以上高速道路へ拡張し、より現実的な高速道路上の交通流の性質を明らかにすることを目的としている。また、実測データとの比較研究のため、実測データをデータベースとして整理し、基本的な解析を行うことが可能なオンラインシステムを構築することを目的とする。 本研究の結合写像型最適速度モデルでは、各車両の位置及び速度は、先行車両との相対距離によって決定される。また、その関数の持つパラメタは各車両に割り当てられる。このような系のシミュレーションの場合、通常のプログラミング言語より、オブジェクト指向言語と呼ばれるものが有効である。本研究では、オブジェクト指向言語C++を用いてシミュレーションコードの開発を行っている。また、Javaを利用したデモンストレーションプログラムも開発している。 平成14年度は、結合写像型最適速度モデルを用いて、トンネル上流に発生する低速で安定な流れのシミュレーションを行った。従来、二車線系に特有な現象と考えられてきた「同期」現象が、一車線系でも発生することを示した。実測データ解析システムに関しては、異なる観測点でのデータ(データ形式が異なる)に対しても対応可能なように改良を受けて、東名道のほか、名神道、東名阪道、伊勢道のデータを追加した。また、流量逆転、速度相関などの解析を行った。それらの成果は、国際会議での報告及び学術論文として発表した。
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