研究概要 |
リスクマネジメントプロセスを組み込んだ都市雨水管理計画の方法論体系について検討するとともに,都市雨水に起因する浸水リスク,環境汚染リスクに対する都市住民,市民団体メンバーの認知の程度をアンケート調査により把握した.得られた成果は以下のとおりである. 1.都市雨水がもたらす浸水リスク,環境汚染リスクの特性ならびに背景要因を明らかにし,リスク発生および被害の程度を規定する要因を技術要因,社会的要因,人間系要因に分類・規定した。 2.現代の都市住民が都市雨水にかかわる環境汚染リスクを認知しにくい状況にある理由を考察し,住民の認知程度を規定する要因を分析するためのアンケート調査を実施した.アンケート調査では,無作為に抽出した都市住民に併せて下水道や雨水管理に関心の高い2つの市民団体メンバーを対象とした. 3.アンケート結果から,都市雨水がもたらすリスクに対する認知程度は高くないことが分かった.しかしながら,浸水危険箇所などの正確な情報を提供することで,リスクに対する社会的認知力が向上すること,また,そのことによりリスク軽減のための多様な行動が促されることが示唆された.こうした知見は,住民参加型の都市雨水マネジメントの必要性を提起している. 4.アンケート調査結果からリスク認知を妨げている要因を明らかにし,リスク認知レベル向上方策,情報の共有化を組み込んだ都市雨水管理計画方法論を提示した. 5.住民参加型の雨水管理方策を評価するとともに,都市における新たな雨水の循環と環境創造を目標としたこれからの市民参加型雨水管理の体系を提案した.
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