本年度は、ネパールにおける、地すべり地形の分布からみた地すベり危険個所把握手法の検討を行った。 対象地域は、ネパール中東部の低ヒマラヤ帯にあるスンコシ川中流域とその周辺である。まず、ネパール政府所有の1/50000空中写真を用いて地すべり地形を抽出し、地すべり地形分布図を作成した。次に、当地域に分布する変堆積岩・結晶片岩・花崗岩・第三紀-第四紀の堆積岩等の地質帯(これらは帯状構造をなしてネパール全体に共通する)ごとに、地すべり地形の分布密度を求めた。さらに、地すべり地形の存在する斜面の最小傾斜を、地質帯別と斜面の地質構造(具体的には流れ盤・受け盤)別に求めた。また、それらの分布と1kmメッシュでの起伏量との関係も調べた。 その結果、各地質帯や斜面の地質構造ごとに、ある斜面傾斜を境に地すべり地形分布率が急増することがわかった。これを岩相・地質構造ごとの限界傾斜と考え、地質・地質構造の点からの地すべり危険度算出の重要な要素と考えられた。次に、現在活動的と判断される地すべり地形は、大規模な岩盤地すべり地形内部のガリー谷頭部に発達する2次的なものが多く、面積的にも小規模である。したがって、大規模地すべり地形がしだいにより小規模なブロックでの活動に移っていくという地すべり発達過程が考えられ、大規模地すベり地形下部の谷浸食が進む斜面が、地すべり発生危険度の高い個所と言うことができる。
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