本年度は、亜ヒマラヤから流下する河川流域の地形構成単位ごとの侵食プロセスとその量の観測による地形変化の把握によって河道変化機構の解明を目指した。また、中間山地帯でのガリー・表面侵食プロセスおよびネパール農山村社会のかかえる貧困・環境問題に対応した持続可能な土壌浸食対策の検討を行った。また、海外共同研究者を日本に招聘し、国内外の防災地形学関係者と意見交換を行った。 対象とした亜ヒマラヤ東部のカジューリ川流域の地形は、上部丘陵域・段丘形成域・沖積平野に分けられ、それらでの雨季(2002.6-9月)の斜面侵食および河岸侵食量・浮遊土砂量を観測した。その結果、流域からの流出土砂量は少なくとも6000ton/km2・年におよび、ネパールのほかの大河川での値にほぼ匹敵すること、また、幅方向の河岸後退速さは、河道幅(数十〜60m)に対して0.3-4.4m/年と非常に大きいことがわかった。そして、河岸侵食は固結度の弱い礫層が露出する場合に大きく、そこがえぐられることによって砂・シルト層が崩落して侵食が進む。このことから、亜ヒマラヤでの河岸侵食対策計画には、地形構成単位ごとに河岸構成物質の被侵食性による侵食ハザードマップ作成が必要であると言える。 中間山地帯での住民参加を基本とした持続的な土壌浸食に対しては、ガリー侵食対策としてタケのガリー内への植栽が、また、ラテライト層の表面侵食対策では、テラス造成と堆肥の敷設による緑化が、住民の直接的な利益を誘導でき自己持続性のある対策として提案できる。
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