本研究は、ネパールヒマラヤの現在の地形変化プロセス・地形発達過程と災害現象との関係を調べ、土砂災害防止対策計画立案のために必要な応用地形学的調査手法を提示することを目的とする。対象現象は、土壌侵食・河岸侵食/河道変化・地すべりであり、以下の内容な成果を得た。 1)土壌侵食:低ヒマラヤのガリー・表面侵食で荒廃した地区を対象として、現在の侵食機構とその進行速さを明らかにするとともに、既往の各種侵食対策の効果を10年間に及ぶ侵食量観測の結果と植生回復状況の調査から検討し、ガリー・表面侵食の発達段階に対応した土壌浸食対策の選定のしかたを示した。 2)河岸侵食/河道変化:地質的脆弱性からネパールヒマラヤで流域保全が最も問題となっている亜ヒマラヤ(シワリク山地)に発源する河川について、流域の地形発達過程と降雨-流出と河岸・斜面での侵食のモニタリングによる現在の地形変化プロセスの把握の両面から、現在の河岸侵食/河道変化の原因を明らかにした。また、流域の土地被覆と河道変遷についても実態を示した。 3)主として低ヒマラヤの代表的な地質の地域を対象に、地すべり地形の分布図を作成し、その分布と地質や斜面勾配の要素から地すべり発生危険箇所を把握する手法を示した。また、災害時のランドスライドの分布とその自然地理属性から発生危険箇所を把握する手法についても検討した。 4)上記研究成果の技術移転のためネパールにおいてセミナー(ネパール地すべり学会主催)で発表を行った。
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