研究概要 |
筆者らは動力学モデルを使って震源近傍強震動、特にその空間分布が震源過程などによりどのように変化するのかを研究してきた(井上、1996;Inoue and Miyatake, 1998;島田ほか、1996)。ここではこのような結果を基に、逆に強震動の特徴から震源過程が推定できないかという問題を考えた。 日本には地震被害調査の良質なデータがある。明治以降の被害地震に対し、被害の詳細・墓石・石碑の転倒方向や転倒率、建築物の倒壊方向、倒壊率などなどが詳細に調査され報告書にまとめられている。また古文書から被害の詳細を読みとり震度分布などが推定されている(宇佐美、1987)。 このような被害分布や家屋や墓石の倒壊の詳細情報は、その場所の強震動の特徴を反映してるはずであり、それは言い換えれば、震源過程と共に地下構造を反映している。しかし断層直上のような震源ごく近傍では震源の影響が大きい.そこで、震源過程が大まかにでも推定されている地震について、建築物の倒壊方向、倒壊率などのデータが震源過程から説明可能かということを検証した.またさらに倒壊データから新たに震源過程情報を得る可能性を検討した.動力学モデルを使った3次元差分法による数値シミュレーションにより断層近傍強震動を計算し、これと倒壊率や倒壊方向データを比較した.それによって、解析した濃尾地震、丹後地震、北伊豆地震、兵庫県南部地震、福井地震は、すべて倒壊データが震源過程から説明可能であることがわかった.
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