研究概要 |
台風9918号時の瀬戸内海西部海域沿岸における被災資料や気圧・風・高潮・波浪の気象・海象観測資料を大規模に収集し,これらの解析および数値計算に基づいて被災地の地域分布や気圧・風・高潮・波浪の時空間分布を推定するとともに,台風9119号時の被災地分布や気象・海象特性との比較および瀬戸内海西部海域における波浪の極値の評価を行った。得られた成果の概要は次の通りである。 1.台風9918号時の沿岸災害の範囲は台風9119号時ほど広範囲に及んでいないけれども,新たに周防灘に面した福岡県沿岸でも大規模な被害が生じ,愛媛県沿岸部では生じなかった。これは台風9918号時と台風9119号時の潮時の相違による。 2.対象領域内に存在する多数の観測地点における気圧・風・高潮の記録を平面補間することにより,台風9918号に伴う瀬戸内海西部海域における気圧・風・高潮の時空間変化を追跡することができる。この結果によると,台風の九州・中国地方への上陸・通過と日本海でのNE方向の進行に伴い,中国地方瀬戸内海側に出現した965hPa以下の台風中心近傍の低気圧部分や20m/s以上の強風域や2m以上の高潮偏差域が山口県側から広島県側に時間を追って移動する様子が再現される。潮位を考慮すると,これらは今回の被災地域と符合する。 3.台風9918号は周防灘西部海域で過去50年の間の既往最大波高を上まわる規模の異常波浪をもたらしたと推定される。この異常波浪と満潮近くの高潮の重畳が福岡県から山口県に至る瀬戸内海沿岸の災害の原因である。また,瀬戸内海西部海域における既往最大波高は過去10年の間の台風9119号,9313号,9918号によって生起していることから,異常台風の来襲頻度が近年増加傾向にあると推測される。
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