研究概要 |
環境庁「全国の地盤沈下地域の概況」(平5)によると、日本全国で年間1cm以上地盤が沈下した地域は、約28ヶ所もあり、特に4cm/年以上の特定地域に指定されている、関東平野北部、濃尾平野、筑後・佐賀平野では沈下が特に著しく、市民生活・産業・農業に与える影響ははかり知れないものがある。本研究が研究の対象領域とする筑後・佐賀平野においては、その地盤沈下の原因が農業用水との関連で報告されている。 このような状況の中で、本研究は合成開口レーダ衛星(SAR)を使い、検出方法には最高感度数cmといわれるインターフェロメトリックSAR(InSAR)を採用する。さらにこのInSARで得られた時期から、地盤沈下が起こった後のSARデータを使い、地盤沈下の前後で3次元標高データの差分を取ることにより、地盤沈下の絶対値の3次元情報を得ることができるわけである。この処理技術を差分InSAR(DInSAR)と呼んでおり、相当高度の技術を必要とする。本研究は、国内でも最大規模で地盤沈下が継続し、その被害も深刻なものとなっている筑後・佐賀平野地域をテストケースとして過去10数年に渡って蓄積されている衛星JERS-1/SAR観測データを使用し、DInSARにより地盤沈下の検出を目的としている。 今回は、JERS-1/SARのデータ[レベル0,1994-4-29,1994-10-22]を取得し、シングル・ルック画像処理した複素画像をDInSARを実行し、干渉画像処理を行った。その結果、インターフェロメトリック画像、コヒーレンス画像、DEM画像を得ることができ、最終的に差分画像が得られた。画像を解析した結果、佐賀県白石地区に地盤沈下によるものと思われる、弱いながらも干渉縞が確認でき、第1段階が達成できたと言える。
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