得られた結果のうち主なものは以下の通りである。 固体プラズマの周期構造に関して、現段階ではpn接合からの周期構造プラズマの効率の良い注入の手段が確立していないので、その代わりに0.5ミリ角のn-InSbの棒状試料をテフロン上に12本挿入した二層構造誘電体導波管を伝搬するTMモードの70GHzのミリ波の特性をFDTD法を用いて検討した。その結果、鋭いフィルターとしての特性が横磁界の印加によって大きく変化することが明らかとなった。また液体窒素温度で対応する実験を実際に行って透過波の振幅と位相を測定し、解析で得た特性とよく一致する結果を得た。同様の解析を500GHz帯でも行い、サブミリ波帯フィルターの特性を注入したプラズマの密度によって大きく変化しうるという結果を得ている。これらの結果は、近々マイクロ波研究会での発表を予定しており、また論文に取り纏め中である。 他方、TEモードを伝えるミリ波帯イメージ線路の表面にInSbの薄板を置いた簡単な構造に磁界を印加すると、線路内の電力分布に大きな偏りが生じることを、詳細なFDTD解析によって見出した。これに対応する実験を70GHzのミリ波を用いて行い、解析で得られた特性と非常に良く一致する結果を実際に得た。同様の検討を現在500GHzのサブミリ波帯で行っている。これらの結果は、特にサブミリ波帯での構造簡単なサーキュレーターへの応用に適していると考えており、現在実際にY型サーキュレーターの試作を試みている。これらの結果も近々マイクロ波研究会での発表を予定している。なお、以上二つの素子の可能性については、すでに昨年9月にドイツで開かれたサブミリ波シンポジウムに出席して発表を行っている。 本科研費で購入したサブミリ波ダイオードについては現在最終調整中であり、十分な活用はこれからの段階であるが、上記のpn接合からのプラズマの注入の検討に役立つと期待している。 さらに、本研究の実験装置に関連して、実験結果が安定に得られるよう、シュタルク効果を利用したサブミリ波レーザーの安定化を試みており、新しい可能性が見つかっている。
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