宇宙線の加速機構と関係のあるフェルミ加速に関するモデル実験によってその基本的な性質を実験によって調べるとともに、静電ポテンシャルと荷電粒子の相互作用に関しても貢献することを目標としている。3年計画の最初の平成12年度においては、モデル実験を組立て電子が加速されることを確認し、新しい知見を見出すことが出来た。具体的には、真空容器内(〜1×10^<-5>Torr)に7個の管状電極(内径30mm、長さ20mm)を5mm間隔に並べて置く。真空容器の外側の軸方向の磁場(<1kG)を作るソレノイド状のコイルに加えて直行する上下方向および水平方向の磁場を作る2組の補助コイルによって、磁場が管状電極の軸に沿うように精度良く調整する。また、両端を除く5個の電極を電気的に接続しその電位を基準電位とし、中央の電極からはほぼ軸上に電子源を挿入する。この電子源から放出される電子(最大エネルギーは約3eV)は、磁場(<500G)の存在によって、ほぼ中心軸に沿って運動する。左端の電極に-50V、右端の電極に-10Vの電位を印加すると両端での電子の位置エネルギーが電子の運動エネルギーよりも大きくなり、電子は中央部に閉じ込められて電子雲を形成するようになる。この電子雲は円柱形で、半径は約2mm、長さは約100mmである。ここで左端の電極に振幅5Vの正弦波の電圧を重畳すると、電子は多くの反射を繰り返し、そのうち一部の電子は十分に加速されて、振動を与えない右端の低い位置エネルギーを越えて漏洩するようになる。この電流と正弦波の周波数の関係を調べると、電流はある狭い周波数領域でのみ大きくなり共鳴的な振る舞いをすることが分かる。しかし、その周波数の関係は整数倍になっているわけではないので、単純な共鳴ではない。また、電流と右端の位置エネルギーの関係を調べると、加速に構造がある様子が分かった。さらに、これらの実験結果と標準写像を基にした数値計算を比較した結果、電子加速は位相空間の島構造とその周辺のカオス的な領域と関係していることが分かった。
|