研究概要 |
ジャイロトロンは高出力化と高周波化に適しており,遠赤外領域の強力な光源として有望である。しかし,ジャイロトロンを動作させるためには強磁場を発生させる必要から,超伝導マグネットを稼動させるための液体ヘリウムを利用できる設備を整備しておくことが前提となるため,そのことがジャイロトロンの光源としての普及を妨げる要因となってきた。そこで,このような状況を打破するため,永久磁石を用いたジャイロトロンの開発を目指している。永久磁石では磁場強度が1T程度に限られるので,目的の領域の発振を得るためには,高調波動作を実現する必要があり,良質な大旋回電子ビームの発生が重要な課題である。 本研究では,軌道計算を行い,良好な電子ビームを発生できる磁場発生用磁気回路を設計し,その結果を受け,磁気回路の製作を終えることができた。永久磁石では磁場強度の微調整ができないという問題点を克服するため,温度変化による磁場強度の目標値からの逸脱を軽減するため,永久磁石システムの温度制御(精度0.1度C)を行うとともに,微調整用の補助コイルを設けることにしている。現在は,電子銃と共振器の最適設計と製作を進めている。計算機ミュレーションによると,製作しているジャイロトロンでは,4次高調波動作により周波数104GHz,出力600Wの発振が得られる予定である。
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