回転プラズマに観測されたホール構造の形成過程をしらべ、定常解をもとめた。遠心力と圧力とのバランスによる構造形成として考えられる台風に対して、回転プラズマで観測されたホールは、バーガース渦と同じ構造を持つことが実験から確かめられ、その定常解を求め、実験結果とあうパラメータを同定した。これによれば粘性係数が古典粘性の10^6倍でなければならず、そのことを矛盾無く説明する問題が残された。しかし一方で、物理的には回転はExBドリフトであることから、実験で得られるポテンシャル分布を用いる現象論的アプローチを取れば、密度分布を再構成できるだけでなく、速度場や渦度も求めることができて、しかもこれらの動径依存性はバーガース渦の近傍場のそれと一致しており、さらに遠方場も求めることができる。このことから、ホール解は、スパイラル構造解と同じ範疇に入る自己組織化解であるといってもさしつかえなく、渦解の多様性を明らかにしたことになる。 また、同じ実験装置で観測された三重極渦は、ExBドリフトとは反対方向の回転を行うが、これはイオンと中性粒子の衝突による電荷分離過程の運動量変化に基づくドリフトであることを同定し、三重極解を求めた。これは非線形定常解であって、その特性は実験結果と似ているが、まだ安定性を調べておらず、実験のロバストネスを示したことにはなっていない。 マイクロ波を電子サイクロトロン波に変換し、プラズマを生成・維持する装置で観測されたスパイラル渦、台風様のホール渦、三重極渦に対して、共通の基礎方程式から出発してそれらの理論構築を行い、パラメータ領域における物理に依存して、それぞれの解が記述できることを示すことができた。このことは回転プラズマにおける極めて一般的な特性として重要であり、これを基礎に生成方法の異なるプラズマにおける渦形成を調べ、銀河系などの回転系への拡張を図りたい。 この研究は、核融合研究所の田中雅慶助教授の実験グループと、ベルギー・ルーヴェンカトリック大学のVranjes博士、Poedts教授らとの国際協力の下で行われたものである。
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