研究概要 |
飛行時間法を用いて小型(直径6cm-長さ6cm)水素負イオン源より放出される重水素分子の温度を計測した.イオン源は3000l/sの高スループット排気系に取り付け,中性粒子ビームはイオン引き出し穴より外部に取り出した.スキマーを用いて中性粒子ビームに整形した後,回転ビームチョッパーで変調して,4重極質量分析器を通過させた後にCDM(Continuous Dynode Multiplier)にてパルスカウントにより粒子検出を行った.その結果,イオン源内圧力が0.6Paを超えると重水素分子は引き出し穴部分で衝撃波加熱され,正確な測定が行えないことが分かった.実際の負イオン源においてはセシウムを添加しない場合,この程度の圧力で運転する場合もあるが,本研究では0.6Pa以下の圧力について測定を行った.放電電力を増加すると共にガスの温度は300Kから増加し,1.2W/cm^3の放電電力密度でイオン源内中重水素分子は1000Kまで加熱されることが分かった. 水素原子の検出は背景ノイズが大きいことより,困難が多い状況である.まずS/Nを改善するために四重極質量分析器の質量範囲を軽元素領域に絞り込んだ.現状の系ではパルスカウンティングが行えるレベルのMCPが入らないため,SEMを取り付けられるように荷電粒子捕集部を改造中である.ファラディカップの計測結果を見ると,水素分子・原子比が放電電力に対して下降すると言う予想に反した結果が得られており,装置をさらに調整している段階である.
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