研究概要 |
オーロラの発生に関与する高速電子が電離層上層の静電電位差によって生成されているという仮説を多くの観測結果が支持している.さらに沿磁力線電位差を伴うV字型の電位構造とイオンサイクロトロン振動数近傍の信号が同時に観測されていることから,電流駆動静電イオンサイクロトロン不安定性は,オーロラ電子の生成を担う沿磁力線電場生成機構の有力な候補と考えられている.これまでの自己無撞着な開境界をもつ2-1/2次元静電粒子シミュレーションによる研究で,電流駆動静電イオンサイクロトロン不安定性によって引き起こされる異常抵抗により沿磁力線電位差が生成されることを示すとともに,電流分布に空間的不均一性がある場合にはその電位構造は,V字型となることを実証した.そのシミュレーションで直接に得られた電位差は小さいものであるが,系の長さに比例して沿磁力線電位差が大きくなるならば,実際のオーロラ電子加速領域の長さに相当する長さの系では,オーロラ電子の加速を説明するのに十分な電位差が得られる可能性のあることを指摘した.この電位差及び電位構造の系の大きさ及び電流分布に対する依存性を調べるシミュレーションを行った.沿磁力線電位差は不安定性によるイオンサイクロトロン波の成長に伴って増加しやがて飽和する.この電位上昇は系が磁力線方向に長いほど長く続き,最終的に到達する電位差も大きくなる.このことから,現実的な系の長さではオーロラ電子加速を説明しうる電位差となりうることが期待される.また電流分布の幅を変化させたシミュレーションから電位構造の幅は電流領域の幅で決まっていることを明らかにした.
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