渦を定量的に調べるためには、プラズマ中の任意の断面において速度ベクトルを測定し、そのデータから流れ場と渦度分布を決定する必要がある。従来の研究では、磁化されたプラズマに対しては、磁場の影響が正しく評価できないという意味で、信頼できる速度ベクトル場の構成法はなかった。本研究では、対称性の議論に基づいた方向性プローブ理論を開発し、プラズマ流速とプローブ電流の間の一般関係式を導いた。また、検証実験によってその妥当性を確認し、方向性プローブを用いた速度ベクトル場の実験的構成法を確立した。この手法を用いて、磁化プラズマ中に形成される渦とその速度場を調べた。ヘリウムプラズマ中で、中心部に密度空洞を伴う渦(プラズマホール)が励起されるのを観測した。この密度ホールはきわ)めて急峻な勾配を有しており、イオンラーマー半径の4〜5倍程度の距離で密度が約1/10になるというものである。プラズマホールの速度ベクトル場は、単極の吸込み渦であること、また渦度は中心付近に局在していることなどが明らかになった。イオンに対する流体力学的な解析からプラズマに対する渦動方程式を導出し、プラズマホールの渦度分布は散逸性の渦構造(バーガース渦)であることを明らかにした。この実験は、プラズマ中でバーガース渦を同定した初めての実験である。バーガース渦が観測されたということはプラズマの粘性が無視できないことを意味しており、渦の大きさから算定された動粘性係数は古典的な計算値よりも4桁大きな異常粘性を示した。
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