将来のレーザー核融合炉では第一壁を液体金属とし、核融合で生成した高エネルギー粒子による炉内面の損傷を防ぐ。炉内には数mTorrの金属蒸気が存在すると考えられている。この金属蒸気の極低温燃料ターゲットへの影響を理論的、実験的に調べた。 理論面では吸着量に対する解析的モデルを製作し、ターゲットへの熱負荷、ターゲット表面での吸着量の分布の計算を行い、実験結果を解析する理論的背景を構築した。さらに、その結果を現在ターゲットに要求されている仕様と比較し、液体壁炉でのインジェクション速度、炉内圧力に対する設計パラメータ領域を明らかにした。また、炉内のガスの流れによる軌道の乱れについても評価手段を構築した。 液体壁炉では熱輻射よりも吸着される金属蒸気の潜熱による熱負荷の方が大きいことを世界で初めて定量的に指摘した。直接照射ターゲットでは主に吸着膜の厚さの一様性から炉内の金属蒸気の圧力は0.5Torr以下でなければならないことがわかった。 実験面ではインジェクション装置、速度検出系を製作し、さらに既存の電気炉を改造した炉環境シュミレーターの運転を開始した。インジェクション装置の大気中での試運転では40m/sの速度を確認した。炉環境シュミレーターの運転では1100℃の運転に成功し、将来の炉内で予想される蒸気圧×飛行距離を実現する環境が整った。報告書執筆時点ですべての装置の組み立てが完了し、実験が開始されている。
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