トリチウム水の安全処理システムの確立は、核融合炉の安全性と社会的受容性を高める上において重要である。一時タンク貯蔵は最終手段ではなく、水蒸留法は装置が大型化し、経済性に問題がある。光半導体触媒の酸化チタンは、水からの水素の分解生成、大気汚染物質の分解除去に期待されている。そこで、天然水とトリチウム水の解離エネルギ差を利用して光分解し、トリチウム水の減容濃縮を実験的に検討し、核融合炉システム中のトリチウム水回収の可能性を実験的に検討した。 研究の初年度の平成12年度では、酸化チタン光触媒に酸化ニッケル助触媒を無電解メッキ法で添加し、光半導体触媒を異なった条件で製作した。続いて、パイレックスセル内にこの光触媒を入れ、高輝度水銀キセノンランプ照射装置を使って紫外線照射し、トリチウム水濃縮分離係数を単一セル内で測定した。本方法では、酸化チタンに酸化ニッケル助触媒を無電解メッキ法で添加する方法の成否が、光分解率の高い触媒製作のカギとなるため、いろいろな条件での触媒を製作し分離係数値を求めた。 前年度の酸化ニッケルでは期待通り光分解反応は生じたが、分解ガス収量は少なかった。そこで平成13年度では、パラジウムを助触媒として同様にアナタースに無電解メッキして製作した触媒を用いて、高輝度キセノンランプで紫外線照射し、トリチウム水濃縮実験をおこなった。その結果、収量の増加が見られ、同位体分離係数も1.1程度の値が得られた。工業的規模で分離濃縮するためには、トリクルベッド方式で気液固三相間の十分な接触を効果的におこない、分離の増幅をおこなう必要があることが分かり、この点は今後の課題である。成果の一部を現在までに公表し、残部についても成果をまとめ次第、公表する。
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