研究概要 |
単結晶に相対論的な速度の荷電粒子を入射すると,ブラッグ条件を満たす方向付近に,指向性のよい単色でコヒーレントなX線が発生する。この現象はパラメトリックX線放射(PXR)と呼ばれている。本研究では、PXR発生機構の理論解析および実験的解析,さらにPXRの応用を目的とする。今年度は次の3点を主に検討した。 1.PXR発生の理論解析および理論から得られた結果の数値解析によって,PXR発生の絶対強度を求める。 2.北大の45MeV電子線ライナックを用いて実験を行い,PXRの指向性・単色性さらにエネルギー可変性を確認し,理論解析との比較を行う。 3.PXRの応用において障害となる,制動X線からの影響を軽減するための計測システムの改良。 本年度は以下のような成果が得られている。 1.PXRは1972年にTer-Mikaelianによって,pseudo-photon法を用いて古典電気力学的に予測された。しかし,古典論では,PXR発生強度の絶対値を求めることはできない。本研究では,相対論的な場の量子論を用いた運動学的な方法で,PXR発生断面積の絶対値を求めることができた。この結果から数値解析を実行し,入射電子エネルギーが超相対論的な場合,PXRフォトン発生数が8.5×10^<-5>[photons/electron]と算出された。 2.20〜30keVにわたってエネルギー可変な単色X線が得られた。単色性に関しては,実験で使用した半導体検出器で測定された単色の特性X線や放射性同位元素からのγ線と比較して,遜色がないことが分かった。しかし,PXRの特徴である角度方向のダブルピークはまだ観測されていない。これは試料の厚さの影響のためと考えて,現在、薄いSi単結晶試料を作成中である。 3.制動X線の影響低減のため,実験配置および検出器に対する遮蔽の強化で工夫した。いままでより30%以上の改善が見られた。
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