研究概要 |
相対論的速度の電子を単結晶に入射させると、X線回折のBragg条件に対応する方向付近にX線が発生する。これは、近年その存在が確認された新しいタイプのX線で、パラメトリックX線放射(Parametric X-ray Radiation : PXR)と呼ばれる。電子LINACのビームライン上に結晶を置くだけで、手軽に単色X線が得られるのがPXRの特徴である。本研究の目的の一つとして、PXRの基礎特性測定および応用のために、良好なエネルギー可変単色硬X線照射場の作成を図った。その作成条件を、理論および実験によって決定した。 電子ライナック(エネルギー45MeV,電流4〜8nA)を用いて、電子ビームの通過方向から測った検出器角度を15〜22°とした場合、15〜30keVのPXRエネルギーの硬X線場が得られた。古典論および場の量子論を用いた解析は、PXRのエネルギーおよびPXR強度の角度分布について実験と良く一致した。作成されたX線照射場の特性、すなわち、エネルギー可変性および単色性が良好であることが実際に確認された。 作成されたX線照射場の良好な特性である単色性を利用して、Nb, Zr,およびMoのK端X線吸収特性を求めた。実験結果は、http://physics.nis.gov/PhyRefData/cover.htmlに公開されている理論解析結果と良く一致した。PXRによる単色硬X線場は、放射光のような大型施設を必要とせず、中・小型加速器で十分その機能を果たし、さらに臨機応変に応用可能であることが示された。 検出器の設置場所、すなわち、X線照射場におけるX線強度の絶対値を決定するには至っていない。本研究で用いたX線検出器システムが、LINACの1パルス当たり1個のphoton計数をするためである。X線場の絶対強度を求めることが今後の課題である。また、Electronicな制動放射のさらなる低減化も残された課題の一つである。
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