高レベル放射性廃棄物の地層処分後の核種の移行挙動研究の一環として、長寿命核分裂生成核種の代表格である^<99>Tc(半減期21万年)に着目し、高い線量率の放射線場におけるコロイドの生成について検討を開始した。今年度は、まずテクネチウムコロイドの生成を概略的に理解するため、過テクネチウム酸イオンを含む水溶液をターゲットとし、電子直線加速器で得られる制動放射線照射を行った。その結果、照射時間の増加に伴い、溶液の色がわずかに黒ずんでいくのがわかり、7価のテクネチウムが4価に還元されて二酸化テクネチウム水和物(TcO_2・nH_2O)コロイドが生成することが明らかとなった。生成した粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、その粒径は50〜130nmに分布していた。また、TEM観察時にコロイド粒子から発生するエックス線を分析した結果、粒子はテクネチウム及び酸素からなることを確認したほか、電子線回折により粒子がほぼアモルファス状態になっていることもわかった。限外ろ過によりその生成量を評価したところ、照射時間とともに増加していく様子が見られた。この生成過程を考察するためには、再現性のある実験結果が得られる照射装置が必要であり、そのシステムを構築中である。また、照射によってターゲット水溶液に付与されたエネルギー(吸収線量)を評価するためにいくつかの線量計について検討したところ、本照射条件ではセリウム線量計が優れた特性を示すことがわかった。今後、この吸収線量を基に、水の放射線分解によって生成する化学種との反応を明らかにし、テクネチウムコロイドの生成過程を考察する予定である。
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