高レベル放射性廃棄物の地層処分後の核種の移行挙動研究の一環として、代表的な長寿命核分裂生成核種である^<99>Tc(半減期21万年)に着目し、高い線量率の放射線場におけるコロイドの生成について検討した。過テクネチウム酸イオンを含む水溶液をターゲットとし、電子直線加速器で得られる制動放射線照射を行うと、二酸化テクネチウム水和物(TcO_2・n H_2O)コロイドが生成することが明らかとなった。生成した粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、その粒径は50〜130nmに分布していた。また、TEM観察時にコロイド粒子から発生するエックス線の分析によりその組成を確認したほか、電子線回折により粒子がアモルファス状態になっていることもわかった。コロイド生成は、溶液中の溶存ガスの影響を強く受け、酸素や亜酸化窒素で飽和した場合にはその生成が見いだされず、アルゴンガスで飽和した試料では比較的低線量の照射でその90%がコロイドを生成した。7価の過テクネチウム酸イオンから4価の二酸化テクネチウムへの還元は、水和電子によって開始され、中間的に生成するTc(VI)とTc(V)の不均化反応を経て起こることが示された。 また、テクネチウム硫化物のコロイドの生成成長過程を光熱変換法の一つであるレーザー光音響法によって検討した結果、水溶液中のコロイド粒子の成長をとらえることに成功した。この過程では、生成した粒子の表面にテクネチウム硫化物が析出しで成長していることが明らかとなった。
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