研究概要 |
フェーデイング現象が温度に依存することを利用し、アレーニウスの式を応用して温度と時間の二つの変数からなるフェーデイング補正関数を開発した。フェーデイング曲線は半減期の異なるいくつかの成分から構成されていること、温度によって成分比は変化しないことが示された。^<244>Cm線源をBAS-UR及びBAS-TRに照射したときのフェーデイング曲線を近似する関数を作成し、照射直後から約500時間までの経過時間において、0〜60℃の間で実測値がこの関数により良く再現されることを示した。さらに、照射後の放置温度を生活温度の範囲で変化させた場合の計算値と実験値との比較を行った。^<244>Cm線源照射後のIPの放置温度を30℃-50℃-10℃と変化させた場合について、関数から算出した計算値は実験で得られたPSL値をほぼ再現することが示された。^<60>Co,^<238>U及び^<244>Cmと異なる線源を用いて、異なる種類のIP(BAS-UR,TR,MS)での関数を作成したところ、関数から算出される各成分の活性化エネルギーは0.53〜1.07eVであった。異なる放射線種、異なるIPにおいて活性化エネルギーに大きな差は見られないが、成分が進むにつれて活性化エネルギーは大きくなっていることが明らかに示され、活性化エネルギーの小さい成分の順にフェーデイングが生じることが示唆された。次に関数のα,β,γそれぞれの線種による依存性及び同一線種においてのエネルギー依存性について検討した。α線源として^<244>Cmを、β線源として^<32>P,^<36>Cl,^<14>Cを、またγ線源として^<60>Co,^<137>Cs用いて検討した結果、α線とβ線では関数を構成する成分の半減期は同じであるが成分比は異なること、β線及びγ線ではエネルギーが異なってもまったく同じ一つの関数でそれぞれ表されること、即ち、線種差による依存性はあるが同一線種においてのエネルギー依存性はないことが示された。
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