研究概要 |
本研究では、イメージングプレート(IP)のフェーデイングの温度依存性を明らかにすることでフェーデイング補正関数を開発し、フェーデイングの線種、エネルギー依存性についての検討を行ったうえで、積算線量評価法を確立し、受動型積算型線量計としての応用を検討した。今年度得られた結果は以下である。 アニーリングにより意図的に熱的活性化エネルギーの低いF^-中心の捕獲電子を解放し短半減期成分のフェーデイングを早めてやると、比較的活性化エネルギーの高い長半減期成分だけが残り、積算線量を安定して定量測定することが可能になる。フェーデイングの影響をできるだけ低く抑えるためのアニーリングの最適条件を、2種類のIP(BAS-TR, MS)を用いた場合について、フェーデイング補正関数を利用して検討した。その結果、BAS-MSを用いて積算後24時間80℃でアニーリングを行うという条件が、1ヵ月積算線量計として定量評価を行うには実用的に最適であることが示された。 上記条件でアニーリングを行うことにより、PSL密度だけから1ヵ月の積算線量を絶対評価できることを示し、実際の測定の場での応用を行った。東北大学サイクロトン・RIセンターの加速器周辺、管理区域境界等において1ヵ月積算計として環境モニタリング測定を試み、同時に環境用蛍光ガラス線量計(FGD)及び環境用ルクセルバッジ(OSLD)との比較検討を行った。本法による測定結果は、FGD及びOSLDによる結果とよい相関を示し、1ヵ月の受動型積算線量計として両者よりさらに低い検出下限を得られることがわかった。 さらに、アニーリングを利用することで、高線量評価ができる手法の開発を試みた。本法により、環境放射線レベルから事故時などの大線量レベルまで広範囲(γ線に対して7桁以上;10^<-6>〜10^1Sv)の線量測定ができることを示した。
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