研究概要 |
中性子捕捉療法は腫瘍部に選択的に^<10>Bを集積させ、中性子を照射し、核分裂をおこさせ、生じる核分裂エネルギーで腫瘍に損傷を与える治療法である。p-ボロノフェニルアラニン(p-BPA)は悪性黒色腫に選択的に^<10>Bを集積させる。その集積理由としては悪性黒色腫で活発化しているメラニン生成の前駆体であるL-ドーパ、DHI、DHICAが、それらの持つジヒドロキシル部位とp-BPAが錯形成することが一因であると考えられている。p-BPAは生体内に投与された後に様々な物質と相互作用していると予想される。そこで、メラニン前駆体であり、副腎髄質で合成され、脳内に広く分布し、ジヒドロキシル部位を持つカテコールアミンであるドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンとp-BPAとの相互作用について調べてみた。p-BPAは脳腫瘍にも^<10>Bを集積させるので、これらの相互作用を調べることp-BPAの悪性黒色腫への^<10>Bの特異的取り込みだけでなく、p-BPAの脳内での挙動や脳腫瘍への^<10>B集積性とその機構を解明する上で重要である。本研究では、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンとp-BPAの様々なpHの混合溶液を調製し、^<11>B-NMRを測定し、相互作用の結果得られる錯体のシグナルが観測されるかを調べ、錯体のシグナルが得られた場合、p-BPAのシグナルと錯体のシグナルから各pHにおける錯形成定数をもとめた。その結果、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンはいずれもp-BPAと錯形成することが判明した。それらの錯形成定数を比較すると、ほぼ同様の錯形能力を持つことが明らかになった。また、それらの錯形成定数をp-BPAとメラニン前駆体であるL-ドーパ、DHI, DHICAとの間における、それぞれの錯形成定数とも比較すると、やはりほぼ同程度の錯形成能力を持つことが明らかとなった。
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