研究概要 |
耐放射線性でしかも大電力用電子デバイスとしてその実用が期待されているワイドギャップ型半導体の一つであるSiCについて、原子炉あるいは核融合炉また宇宙空間等、高エネルギー放射線でしかも高温や極低温の厳しい環境下での使用を想定し、原子炉放射線あるいは電子線を各種温度で照射し、その特性変化を分光学的手段や電子スピン共鳴(ESR)法を用いて観測し、得られた結果を解析した。また、関連物質として窒化物や酸化物あるいは他のワイドギャップ型化合物半導体等についても調べた。 次に得られた研究結果の主なものを要約すると1)n型の4H及び6H-SiC単結晶中に照射により生成されたSi空孔型欠陥の生成効率の照射温度依存性が従来の定説、即ち、MgOやアルミナ等イオン結合性の高い物質は、照射による空孔型欠陥生成量が低温でより高く高温でFrenkel欠陥の再結合により指数関数的に低くなるという現象と異なっていることを見出した。SiCの場合10Kから370Kの間で200K付近に極大値を持つ現象が分光学的及びESR測定両者により見出された。他方、同様の照射温度依存性が共有結合性の高いAINやルチル(TiO_2)についても見出された。これらのことから、その原因が共有結合性にあることを提案した。 2)p型SiCにおいて同種の現象は明確に得られなかった。この原因は、アクセプターとして添加されたホウ素の(n,α)反応による核発熱が照射温度効果を打ち消してしまったためであると判断された。 3)原子炉熱中性子照射によりSiC中の^<30>Si(n,γ)^<31>Si反応を利用した^<31>Siのβ崩壊から核転換により注入される^<31>Pドナー効果についても実験を行い有効であるという結果を得た。 4)p型のSiCが照射による核転換によりn型に変換される。
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