研究概要 |
セラミックス絶縁材料である高純度サファイアの電気的特性を14MeV中性子照射下で調べた。その場測定のための実験装置を製作し,日本原子力研究所FNS施設において14MeV中性子照射実験を行った。一定のバイアス電圧下では,サファイア試料の14MeV中性子誘起電流は中性子フラックスにほぼ比例し、単位吸収線量率当りの電気伝導度の増加係数は〜1.0×10^<-10>(S/m)/(Gy/sec)であった。また,中性子照射開始直後には大きな過渡電流が,そして,照射停止後には非常に遅い電流回復成分が観測された。さらに、外部バイアス電圧源が無い状態でも中性子誘起電流が観測され,サファイア試料内部にオフセット電圧の発生機構があることがわかる。これらの過渡電流やオフセット電圧発生の原因としては,サファイア中における分極効果を含む電荷蓄積や電荷キャリアの捕獲・再放出機構が考えられる。 中性子輸送計算には,核データライブラリENDF/B-VIとMCNP計算コードを,核反応生成荷電粒子の輸送計算にはTRIM98を用いて,サファイア試料の14MeV中性子誘起飽和電流の計算値を求めた。実験値は計算値より約4桁小さく,サファイア中に生成された電荷は非常に短時間で欠陥に捕獲されるか,あるいは再結合により消滅していると考えられる。飽和電流の計算値と実験値の比較から,核反応生成電荷の平均ドリフト長さは,およそ2×10^<-2>μmと見積もられた。この値の妥当性については,別方法によるクロスチェックが必要である。
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