研究概要 |
宇宙空間における乗務員個人中性子線量計測や核反応粒子識別測定には固体飛跡検出器がその特徴を発揮する。これらへの応用のためには荷電粒子に対する正確な基礎データが不可欠であるが、エッチング及び評価条件が研究者によって異なっているため、本研究では神戸商船大学とフランシュコンテ大学(UFC,フランス)及びドレスデン工科大学(TUD,ドイツ)の3チーム間の国際比較実験を遂行することを目的としている。 まず3者間の協議の結果、実験に使用するCR-39検出器は、イギリス製TASTRAKと日本製BARYOTRAKの2種を選択した。また、エッチング条件は、TUDで採用されている70℃の7.25規定NaOH溶液とし、さらに、応答データの解析は飛跡長(track length)の成長曲線から求める手法を基準とした。 既に3チーム独立に、プロトン、デューテロン、トリトンのデータを収集し始めていたので、今年度の主な対象はリチウム-7イオンに絞り、4.8,6.8,10.8MeVで照射されたサンプルを配布し、各チームで処理・データ解析を行った。この結果、TASTRAKに10.8MeVで照射したサンプルのみ、TUDチームの評価値がおよそ20%ずれていたが、残りの条件では誤差の範囲で良く一致することを確認した。原因は現在究明中であるが、エッチング溶液の劣化ではないかと推察している。 さらに、TUDで開発されたプログラムSTOPOWで計算したIET_<350>をパラメータとして整理すると、感度(エッチ率比)との良い相関が得られることも見出した。これらの結果の一部は、昨年の国際会議において発表した。 次年度は、次のステップとして、炭素-12イオンの比較実験を行う予定である。
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