研究概要 |
宇宙空間飛翔体乗務員の個人被ばく線量計測や核反応粒子識別測定には、積算型測定器である固体飛跡検出器がその特徴を発揮する。これらへの応用のためには荷電粒子に対する正確な基礎データ収集が不可欠であるが、エッチング及び評価条件が研究者によって異なっているという問題がある。本研究では、神戸商船大学とフランシュコンテ大学(UFC,フランス)及びドレスデン工科大学(TUD,ドイツ)の3チーム間の国際比較実験を通して、国際的にも信頼性のあるデータベースを確立することを目的としている。昨年度は、水素同位体のデータ整理に加えて、リチウムイオンについてサンプルを配布し、各チームで処理・データ解析を行った。この結果、一部の条件を除き、誤差の範囲で良く一致することを確認した。 今年度は異なるエネルギー(4.8,6.8,10.8 MeV)でリチウムイオンを照射するとともに、次のステップとして炭素イオンに対するデータを収集した。 前者については、詳細に調べると、残余飛程に対するレスポンス曲線が入射エネルギーによって異なることが判明した。これまでの潜在飛跡形成機構解明に関する知見を基に検討した結果、検出器表面の溶存酸素の影響ではないかという推論を導くに至った。 今年度のもうひとつの重要な目的である炭素イオンのデータについては、3チーム間の評価値のずれがリチウムイオンより大きくなる傾向にあった。これについては、我々が開発した多段階エッチング法を適用したデータとの比較から、評価したレスポンスの誤差はエッチング間隔の選定が重要なファクターとなっていることを明らかにした。これらの成果は今秋の国際会議において報告する予定である。 最終年度となる次年度は、これまでのデータをすべてまとめるとともに、TUDで開発されたプログラムSTOPOWで計算したLET_<350>をパラメータとして整理し、データベースとする予定である。
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