研究概要 |
塩化ジフェニールヨードニウム(DICl)((C_6H_5)_2ICl,MW316.57)はエタノールを溶媒として電離放射線を照射すると,光分解し水素イオンを発生する。この溶媒中のクリスタルバイオレットラクトン(CVL)(C_<26>H_<29>N_3O_2,MW415.54)は発生した水素イオンによりラクトン環が開裂し青く発色する。吸光度の最大値は可視領域の610〜620nmにある。DICl20mM/L,CVL1mM/Lでの反応性が良好であった。 放射線の線質による影響を検討した。X線およびガンマ線は50Gyまでの線量に対して吸光度は線形関係が得られた。 照射後の色変化について検討した。照射後の吸光度の変化率は0.01348であり,3日間4℃に保管すると変化率は0.01305に減少し,低温保存による退色化がおこった。しかし,9日間4℃に保存した場合,それ以上の退色変化は示さなかった。一方,室温保存の場合では,吸光度の変化率は0.007に半減し明瞭な退色変化を示した。 分割照射による吸光度の変化を測定した。溶液を調製直後に一回照射したときの吸光度の変化率は0.016であったが,4℃の保存しつつ分割照射した場合,吸光度の変化率は0.007とかなり減少した。しかし,調製した溶液を4℃に保管後,最後の分割照射の時に検量線を求めた場合,吸光度の変化率は0.008であり,分割照射による変化率の減少は溶液保管に伴う反応性の低下と考えられる。 また,室温に保存した場合の分割照射における吸光度の変化率は0.017であり,溶液を調整後室温保存して最後の分割照射のときに検量線を作成したときの吸光度の変化率は0.022であった。このことは,室温保存により徐々に放射線による反応性が高くなることがわかった。 以上のことより、この反応系は低温と室温での温度特性が異なることがわかった。
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