研究概要 |
有名な自然保護地域の高等植物についての撹乱情報はしばしば伝えられている.さらに,大気汚染などの被害は,適応能力の低い種から順次被害を受けると考えられてきた.ところが,地球規模の環境の変化のためか従来,適応能力が高く人間との共存を得意とする人里の生物にも何らかの被害が出ているのではないかと考えた.申請者は日本産のLecanora subfusca groupを1988年にまとめる際,鳥取県の千代川の河原でLecanora muralisというチャシブゴケ属の地衣類を大量に確認した.地衣類は菌と藻の共生体であり,大気汚染指標植物として利用されてきている.しかし,Lecanora muralisはいわば人里の地衣類と考えられ,ヒトや鳥など動物の活動場所に生育していると考えていた. 申請者が20年前に作成した本種の日本における分布図に従い,各地点での消長,含有化学成分,胞子発芽能力を調べ,このような人里の植物にいったい何が起こっているのかを解明する試みを行っている. 平成12年度は北海道の1地点,鳥取県の1地点,島根県の1地点(日の岬)で確認調査を行ったが,驚いたことに,北海道えさし神威岬,島根県日の岬では美事に絶滅していた.鳥取県の1地点も立派な群落と言えるものではなかった.
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