研究概要 |
平成12年度はフルボ酸およびモデル土壌粒子単独系の酸解離平衡解析を行った。その研究実績は以下のとおりである。 1)腐植物質標準試料の調製およびキャラクタリゼーション フルボ酸試料を標準土壌試料から抽出した。抽出方法としては国際腐植物質学会による標準法を採用した。FT-IR法および^1H,^<13>C,^<15>N NMR法により主要な骨格構造および官能基構造を推定した。同様にフミン酸標準試料を調製し、これをシリカ表面に化学的に固定させ、モデル土壌粒子を調製した。 2)酸解離平衡測定 a)ミクロ複合電極を用いた自動滴定システムの製作:過剰の添加塩存在下でフルボ酸標準試料およびフミン酸-silica試料の酸解離平衡をガラス電極を用いる電位差法により調べるためには、微量の試料量で厳密なpH測定を行わなくてはならない。このためのコンピューター制御の自動滴定システムを構築した。 b)試料の高分子電解質性および官能基分布の不均一性の評価:滴定曲線から試料のカルボキシル基含量を決定した。また、酸解離定数の試料濃度、解離度、および塩濃度依存性を系統的に調べた。この結果、フルボ酸試料のカルボキシル基はその大部分がpKa値が2程度の強酸性であるのに対し、フミン酸およびフミン酸-silica試料のカルボキシル基はpKa値が4以上の弱酸性で、両者のカルボキシル基構造が異なっていることが明らかとなった。また、フミン酸およびフミン酸-silica試料の滴定においては平衡電位達成までに長時間を要し、溶液内会合現象が著しいことがわかった。
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