フルボ酸・フミン酸試料を標準土壌試料から抽出した。フミン酸試料をシリカ表面に化学的に固定させ、モデル土壌粒子を調製した。pH滴定法により試料の高分子電解質性および官能基分布の不均一性を評価した。この結果、フルボ酸試料のカルボキシル基はその大部分がpKa値が2程度の強酸性であるのに対し、フミン酸およびフミン酸-silica試料のカルボキシル基はpKa値が4以上の弱酸性で、両者のカルボキシル基構造が異なっていることが明らかとなった。また、フミン酸およびフミン酸-silica試料の滴定においては平衡電位達成までに長時間を要し、溶液内会合現象が著しいことがわかった。更に、pHと遊離金属イオン濃度(pM)の同時測定することにより、フミン酸およびフミン酸-si1ica試料の錯平衡を測定した。この結果、フミン酸系では平衡達成に長時間要すること、およびフルボ酸系では比較的短時間に平衡が達成されることが明らかとなった。フミン酸の疎水的骨格構造のために会合性が著しいことがその原因であると推測された。錯平衡をGibbs-Donnanモデルにより解析し、微視的結合定数と官能基分布の不均一性を評価した。最後に、粘土鉱物・フミン酸複合体を一種の陽イオン交換体とみなして、種々の陽イオン交換体カラムによる重金属イオンの溶離挙動をフルボ酸およびフミン酸の共存下で調べた。水/フルボ酸・フミン酸/陽イオン交換体系の重金属イオンの溶出挙動を追跡した。フミン酸、フルボ酸単独系の錯平衡、および、フミン酸・フルボ酸の固相への分配平衡の知見から重金属イオンの移送挙動を予測できることが示された。
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