本研究課題に関連する2年間にわたる主な研究実績は次のようにまとめることができる。 (1)長崎地方の黄砂現象の出現頻度を再点検するために、長崎海洋気象台の観測記録を用いて、黄砂現象の経年変化を調査した。その結果を従来から蓄積されていたデータと結合し、1914〜2001年に及ぶ88年間の出現頻度分布を明らかにした。その結果、近年においては増加傾向にあることが明らかになった。 (2)光散乱式粒子測定器(Optical Particle Counter ; OPC)を用いて、2年間にわたって春季の大気中のエアロゾル濃度をほぼ連続的に測定し、黄砂現象出現前-黄砂現象中-現象後に至る大気中の粒度分布の変動を詳細に解析した。黄砂時の顕著な大粒子の急増ばかりでなく、小粒径の濃度にもかなり複雑な変化があることが明らかになり、大陸からの大気汚染物質の流入の可能性が示唆された。 (3)今回の研究経費で新規に導入したスカイラジオメーター(Sky Radiometer)によって、波長別直達日射量、波長別天空散乱光の散乱角度分布を連続的に測定し、黄砂現象時の光学的特性を明らかにした。また、この基礎的データは研究分担者(森山)の主たる研究課題である衛星リモートセンシングの解析にも活用された。 (4)国立環境研究所との共同研究計画に基づいて、同研究所のレーザーレーダー装置(lidar)が長崎大学構内に設置され、2001年春季には、北京・長崎・つくばの3地点ネットワーク観測が実現した。この観測によって、長崎上空の大気エアロゾルの3次元的構造について従来は思いも寄らなかった貴重な知見が得られ、今後の総合的な解析に有用な黄砂現象に関する大気光学的データデットが蓄積できた。
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